2022.7.1 東京都台東区上野桜木
住宅における木構造の意味とは
道路を挟んで東京藝術大学に面した敷地からは、キャンパスの緑が正面に見える。住宅地ではあるが、台地に位置しているため振り返ると住宅の屋根越しに視界が開けている。
1階では店舗を営み、家で仕事をすることも多い夫婦のため、仕事と暮らしが緩やかに繋がり、家族がそれぞれの居場所で関わり合える状態(関係性)を目指した。
エントランスは店舗と並置し、道路から奥行きをもたせることで店舗との混在を避け室内で接続させている。2階へ上がると高さ約6.2mの吹抜けがあり、スキップフロアで構成された家族の居場所を立体的に関係づけている。道路に面したバルコニーや周囲を切り取るように設けた開口を介して採光だけでなく外部環境を取り込みながら、視線が交わり、声が聞こえ、家族がどこにいても互いに意識し合える場所である。
太い柱や斜めの梁を露出し、木構造を素材として見せているが、木造であることが住宅にとって必ずしも経済的、工法的優位性をもたない現状で、木構造にはどのような意味があるのだろう。表現としての選択肢かもしれないが、柱、梁、天井面のように、木構造が素材同士の取り合いの中で断片的に現れるよう、意図的に操作している。木構造が他素材と等価に扱われることによって、建物全体のフレームや構造形式、規則性といった全体像を把握することは難しくなり、建築として経験を重ねていくことで、記憶の中でその断片が繋ぎ合わされ関係づけられていく。
これは家族のあり方とも似ていて、家族が常に一緒にいることは難しいが、見え隠れする姿や声を聞きながら、お互いを認め合う関係性にも繋がる。構造の断片を現すことによって、ここで暮らす家族が、家のもつ実際の大きさやスケールとは異なる空間を感じることができれば、物理的大きさには限りがあるが、意識上の関係性は無限であり、それは木構造の可能性のひとつとして考えてもよいのではないだろうか。 この記事にコメントする
道路を挟んで東京藝術大学に面した敷地からは、キャンパスの緑が正面に見える。住宅地ではあるが、台地に位置しているため振り返ると住宅の屋根越しに視界が開けている。
1階では店舗を営み、家で仕事をすることも多い夫婦のため、仕事と暮らしが緩やかに繋がり、家族がそれぞれの居場所で関わり合える状態(関係性)を目指した。
エントランスは店舗と並置し、道路から奥行きをもたせることで店舗との混在を避け室内で接続させている。2階へ上がると高さ約6.2mの吹抜けがあり、スキップフロアで構成された家族の居場所を立体的に関係づけている。道路に面したバルコニーや周囲を切り取るように設けた開口を介して採光だけでなく外部環境を取り込みながら、視線が交わり、声が聞こえ、家族がどこにいても互いに意識し合える場所である。
太い柱や斜めの梁を露出し、木構造を素材として見せているが、木造であることが住宅にとって必ずしも経済的、工法的優位性をもたない現状で、木構造にはどのような意味があるのだろう。表現としての選択肢かもしれないが、柱、梁、天井面のように、木構造が素材同士の取り合いの中で断片的に現れるよう、意図的に操作している。木構造が他素材と等価に扱われることによって、建物全体のフレームや構造形式、規則性といった全体像を把握することは難しくなり、建築として経験を重ねていくことで、記憶の中でその断片が繋ぎ合わされ関係づけられていく。
これは家族のあり方とも似ていて、家族が常に一緒にいることは難しいが、見え隠れする姿や声を聞きながら、お互いを認め合う関係性にも繋がる。構造の断片を現すことによって、ここで暮らす家族が、家のもつ実際の大きさやスケールとは異なる空間を感じることができれば、物理的大きさには限りがあるが、意識上の関係性は無限であり、それは木構造の可能性のひとつとして考えてもよいのではないだろうか。 この記事にコメントする
設計・監理
川辺直哉建築設計事務所/川辺直哉、石川誠大、西丸健
店舗内装:株式会社CIRCUS/鈴木義雄
店舗内装:株式会社CIRCUS/鈴木義雄
構造設計
mono/森永信行
用途
住宅、店舗
敷地面積
87.25㎡
建築面積
56.56㎡
延床面積
156.43㎡
構造
木造
規模
地上3階
工期
設計期間:2021年5月〜2021年10月
工事期間:2021年11月〜2022年5月
工事期間:2021年11月〜2022年5月
施工
株式会社長野工務店
植栽計画
SHIKINOWA DESIGN/甲斐幸平
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